コーヒーが最初に発見されたのはエチオピアだと言われています。そしてそれがイエメンへと伝わり1800年代までモカ港という名の港から世界へ輸出されていた為、現在エチオピアとイエメンのコーヒーは「モカ」という“商品名”で呼ばれています。
その後コーヒーは徐々に世界に広がってゆくのですが、1699年(日本は元禄12年、第5代将軍徳川綱吉の時代)にオランダの東インド会社によって当時はオランダ領であったジャワ島へと運ばれた苗が定着、1706年にジャワ島よりアムステルダムの植物園へ持ち込まれた木が栽培され、数年後にフランスのルイ14世がアムステルダム市長より譲り受けた苗木をジャルダン・デ・プラントという植物園に移植させました。このコーヒーノキがnoble tree(ノーブルツリー)と呼ばれ、中南米へと広がって行くコーヒーの元になったそうです。その後、1720年代にフランス人将校ガブリエル・ド・クリューによりマルティニーク島へコーヒーの苗木が持ち込まれ、そこから中南米各地へと広がりました。このときマルティニーク島に植えられた木を祖先とするコーヒーの品種こそが「ティピカ」です。
品種名としてのモカ、商品名としてのモカ
現在、そこまで機会は多くないもののイエメン、エチオピア以外でモカというコーヒーを見かける事があります。例えば当店でこれから販売を開始するコスタリカ産の「ロスアンヘレス ケブラダグランデ モカ」など私個人としてもそれらのルーツがとても気になりました。そこで今回は生豆仕入先様へと質問をさせていただきましたので、以下はご担当者様より頂いた返答をもとに内容を書いていきたいと思います。
ロスアンヘレスミルで生産を行っているモカ種はコスタリカの研究所・種子バンクであるICAFE (Instituto del Café de Costa Rica)から苗木を入手し生産しているものです。そしてそのコスタリカのモカ種のルーツは前述の1700年代にジャワ島から中南米へと広がってゆく過程で誕生したティピカ群の中の1つだそうです。当時、中米でも高品質なコーヒーの為、生産流通をさせようとしましたが、このモカ種とされる品種サンプルは生産量が非常に少なく、生産ラインに乗らなかったという経緯があるようです。
また、当時持ち込まれたモカ種は1種だけではなく、いくつかナンバリングされた小品種群として記録されていて、そのうち一部の品種が現在市場に流通しているようです。現在いくつかの国の農園でモカ種が生産されていますが、定義・遺伝構成上はいずれもモカとされているものの、葉の大きさや生豆のスクリーンサイズ等の差異があるとの事です。
一方で(ココ重要!)、エチオピアやイエメンのモカは品種を問わず(一般的に原種や在来種などと呼ばれている事が多い)モカ港を起点に輸出されていたことから商品名としてモカと言われているのであって、コーヒーの品種名としてのモカとは異なる意味合いとなっています。
色々なモカ
当初私は中南米産のモカはエチオピアもしくはイエメンのコーヒーの苗を各地の農園へ移植したものなのだろうと考えていました。しかし、今回お話を聞いた限りでは直接的な繋がりは無いように思えます。もちろん全てのコーヒーのルーツがエチオピアだと言われていて、そこから品種改良されているという事を考えれば全く関係が無いという事はないとは思いますが。
また、コーヒードリンクの1つにカフェモカというものがありますが、これはエスプレッソコーヒーにミルクとチョコレートシロップを加えた飲み物の名前で、これもエチオピアやイエメンのモカ並びにコーヒーの品種としてのモカとは別のものです。
余談も余談ですが、今日この記事を書いていて海外生活をしていた際にスーパーなどで見かけた「KOMBCHA」を思い出しました。日本でも少し話題になりましたかね。何だろうと思ったものの飲んだ事はないので味は分かりませんが、昆布茶とは一切関係のない発酵ドリンク(?)のようですね。
それはさておき、コスタリカ産モカは本日より販売開始です。